時間は無限だが、空間は無限でないはず。 けれど、映画のスクリーンに閉じ込めることで、印画紙にいったん定着することで、 時間は有限な、あるいはリアルなものになる。 水平線の一部のみを切り取ることで、数学的な無限を彫刻として切り取ることで、 空間…
資生堂アートハウスは谷口吉生さんの美術館デビュー作である。 訪問者が目にする建物のファサードは唯一エントランスだけで、 設計の主眼はひたすら動線を描くことにある。 特徴的な半円形の階段をはさんで、左が丸い中庭の四角い空間、右が四角い中庭の丸い…
秋野不矩美術館には大きな蜘蛛が住んでいた。 山を見下ろすテラスの漆喰で塗られた軒裏で、やわやわと脚を動かしていた。 森が動くはずがないと思っていた「蜘蛛巣城」の城主どころか、 既にここは森に飲み込まれているのだ。 部屋と部屋が45度に振れたプラ…
ハイテク探査機と彗星との出会い。 七夕に合わせた一瞬のチャンス。 探査機のかけらが彗星の核に受精して、いつかどこかで新たな命を生む。 アシモフが言っていた、炭素生命から硅素生命へのジャンプ。
現場監理へ行ったら、近くで入谷の朝顔市が開かれていた。 鬼子母神のあたり、言問通りの歩道が朝顔で埋まっている。 「青はもう売り切れちゃったのよ」 バラが青くなっても、夏はこっちの青い花。
史上最大のコンペとも言われた富弘美術館が開館した。 丸い部屋の連なりを歩きまわりながら、 おそらくは金沢21世紀美術館の空間体験と重なる部分があるのではないだろうかと想った。 ただし、周辺環境との応答、部屋と部屋の隙間の扱い方、天井高さの決め…
石川初さんの身辺メモでGoogle Mapsを知った。 地球上のあらゆる場所の衛星写真をシームレスに見ることができる。 例えば、スイス山岳地帯の氷河とか。 「80日間世界一周」の映画に、マッターホルンの山頂を通過する瞬間に ひょいと手を伸ばして氷を取って…
新海誠のアニメーション「雲のむこう、約束の場所」には天を衝く極細の塔が登場する。 ある高さを越えて、かつ十分に軽量な塔は、 重力と遠心力が釣り合って自立するという旧ソ連の研究があった。 塔というのは、なんとなく北方のイメージがあるのだが、 宇…
恵比寿に沖縄料理の「マンタ食堂」という店がある。 とはいえ、正確に言えば、ここは八重山料理らしく、 そばにしても沖縄そばではなく、八重山そばである。 8席だけの小さい店だが、そこには船で一晩の距離がある。
上野にステーキカウンター「ポパイ」という店がある。 もとは、立ち食いステーキ「デンバー」という名前で、 立ち食い+自分で焼く、というスタイルは変わらない。 ステーキの形というのは四角ではなく、楕円形に近い。
城南島の新築のリサイクル工場で、現代美術の展覧会が開かれている。 あたりは人工島らしい「抜けた」風景で、 ときおり頭上を、羽田空港に着陸する直前の飛行機が異様に低い高度で通過する。 その機影が窓から工場のなかを通過する。間を置かず、エンジンの…
沢木耕太郎の「無名」を読んだ。 無名に生きた自分の父親の人生を思いつつ、その証ともいうべき句集の制作を思い立つ。 そう言えば年末のラジオでも、若くして有名ということを語っていたが、 彼が取り上げるのは、若者か老人が多いかもしれない。 あるいは…
横浜ーロッテのセ・パ交流戦に行ってきた。 球場は今年からネットがなくなって格段に臨場感が増している。 ファウルが飛んでくるたび、 係員がピィーピーとホイッスルを吹いてスタンドの一角がざわめく。 雨上がりのデイゲームは、高橋慶彦の遺伝子を注入さ…
三菱財閥の祖、岩崎家の邸宅は小高い丘にありアプローチが圧巻。 緩く登りながら右にカーブしていく坂道の向こうに、 まずアメリカの山小屋風の離れを見上げる。 一呼吸置いて本館の正面広場に出る。 本館を左に周り込むと芝生の庭が広がっている。 往時には…
洗濯物は風通しのいいところに干したい。 あまり人に見られるのもどうかと思うけど、 我が家に翻る旗だと思えばいいか。 そもそも、このバルコニー自体が鉄の旗。
ニューヨークタイムズの記事によれば、 「日本以外の世界のどこにおいても、90秒の列車の遅れが深刻な問題になるところはない」 とはいえ、プラットフォームで待つ90秒は意外に長い。 そういうプレッシャーが運転士を押しつぶしたのか。 そういう気持ちが自…
茶沢通りを歩いていたら「ルヴァンのパン、本日入荷」とあったので買ってみた。 もともと西村佳哲さんの「自分の仕事をつくる」という本で知った店。 いちばんプレーンな食パンは、すこし焦げ目がつくまでトーストするとおいしい。 クロワッサンも生地がぎっ…
候孝賢監督の「珈琲時光」を観た。 電車に乗っているシーンが多い。 自ら選びとったのに、なにかに身を任せているような時間、 自ら選びとったのに、どこへ向かっているのか分からないような方向感覚。 珈琲の前のひとときを過ごして、またそんなふうに動き…
スリバチ状の地形の街を探索して楽しもうという、その名もスリバチ学会に初参加。 今回の探索地は松濤から富ヶ谷のあたりで、渋谷川の川筋を道標に歩いた。 水源を目指して段差をジャンプしていく40人もの一団は、鮭の群れのようだった。 スリバチの底ではマ…
すべる、くぐる、と、お母さんがいる。 すべる、くぐる、と、お母さんがいる。 すべる、くくる、と、お母さんがいない! 六本木ヒルズの裏の公園の風景。
「となり町戦争」を読んだ。 隣町と公共事業としての戦争を遂行する話。 政治から死まで、身の回りにあるはずなのに見えないものを、 戦争という大胆なフレーム設定で浮かび上がらせている。 それを身近な人間との別れという「リアル」に置き換えるだけでな…
柱の脚元には最も大きな力がかかる。 不要な鉄筋は1本もない。 組む順番を間違えたらできない。 コンクリートで見えなくなってしまうのが惜しいほど。
ソフトクリームを食べるお相撲さんがいて、 記念写真を撮る外人がいて、 旗を持ったツアコンがいて、 寝転んでケータイで話すサラリーマンがいた。 桜は明日あたりが満開。
伊東豊雄さん設計のTOD'S表参道店は、 ケヤキ並木を表現として取り入れているそうだ。 並木の下を歩くのは、森を歩くのとは違う。 配列に身を任せてしまえば、構造は消えてなくなる。 クリストのゲートのように、 ちりちりと変わる影を映してやるだけでいい。
向かい合って待っている。 「都市とあそぼう」展を見終わっても、まだ待っている。 待つのも仕事のうち。 仕事も遊びのうち。
メゾンエルメスで開催中のスゥ・ドーホー展 ”リフレクション”を観た。 吹き抜けのギャラリースペースが透過性のナイロン膜で垂直に二分され、 韓国の伝統的な形式の門で水平に二分される。 ここが四象限の中心、ただし、反転された世界。 けだし、空間の隅々…
松戸市立博物館の”ジャパニーズ・モダン−剣持勇の世界−”展へ行った。 倉俣史朗の”How high the moon”は、どっしりした形をしているが、 同時にデューク・エリントンのナンバーのように軽い。 剣持勇の”柏戸イス”は、どっしりした形をしているが、 大横綱の土…
動いているものを、小さな窓から見るのは楽しい。 子供の頃、望遠鏡で見た土星はすぐにフレームから外れていった。 顕微鏡で見たミジンコも。 青木淳さんが設計したプールを見下ろすトップライトにもそんな楽しさがある。
雪の上に薄く残るタイヤの跡をなぞりながら登って行くと、小さな集落に辿り着く。 かつての分校の跡地に、再び新しい分校を出現させようと計画している。 子供たちは麓の小学校からスクールバスに乗ってやってくる。 たぶん、ひと夏のひとコマだけの授業。 …
窓際にポトス。 横にはジンジャエール。 グリッドには抵抗。 ホワイトには点灯。