「崩れ」を読む

kasta2004-12-11

幸田文さんの「崩れ」を読んだのは、中越地震に触れた新聞のコラムで取り上げられていたからである。
この本は連載をまとめたものだが、前半と後半では文章の趣きがかなり違う。
はじめは、地滑りという掴みどころのないものに戸惑い、被災者への接し方に迷い、
なによりそれに関心を覚えた自分自身に対する困惑が感じられるのだが、
やがて、立ち位置が定まりにつれて文章が軽快になってくる。
それは、作者の視線の先が天変地異からそこに生きる人間へと移りゆくプロセスでもある。
そして、読む者にとってもそのスタンスを共有できることが、災害文学としての真骨頂である。